大判例

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広島高等裁判所 昭和25年(う)1037号 判決

本件の昭和二十五年八月四日附の当初の起訴状には其の訴因として所論の様な記載がしてあり、公職選挙法第一四一条に所謂自動車とは主として選挙運動の為に使用されるもので、選挙運動には、種々の方法形態があることは何れも所論の通りであるが、公職選挙法第一四一条第一項は如何なる方法形態の選挙運動であるにしても、同条所定の選挙に於て其の選挙運動の為に主として使用する自動車は一定の台数を超えることは出来ない旨を規定して居るのであるから、其の法定制限台数以上の自動車を使用したとなす同条違反の公訴事実を表示するに当つては、同条所定の選挙に於て特定の候補者の為に法定制限台数を超えた自動車を使用した旨を表示すれば足り、所論の様に如何なる方法形態の選挙運動に使用したものであるかを表示する必要はない。従つて所論の本件昭和二十五年八月十一日附起訴状に訴因として所論の様に記載がしてあり、之に基いて原審が審判しても何等不法に公訴を受理したものということは出来ない。論旨は理由がない。

論旨第二点について。

併し公職選挙法第一四一条に所謂主として選挙運動の為に使用する自動車とは其の使用、状況等によつて社会通念上選挙運動の為に使用することが主な目的となつて居ると認められる場合をいうもので必ずしも其の自動車自体にポスター、立札等を掲示したり、其の自動車上で選挙運動をした場合に限らるべきものではないと解するところ、原判決挙示の証拠に依れば被告人は昭和二十五年六月四日施行の参議院議員選挙に於ける全国選出議員候補者岩沢忠恭の当選を得せしむべく自己所有の小型自動車に運動員三名を乗せ自己が之を運転して同月三日午前九時頃から午後九時頃迄の間山口県阿武郡奈古町木与、河内、筒尾等の各部落に亘り延三十粁位を乗り廻し、右各部落に於て右岩沢忠恭に投票を得せしめる様選挙運動をしたものであることが認められるから、仮に右自動車自体にはポスター、立札等を掲示せず、投票を得せしめんとする諸般の行為が右自動車から下車してなされたとしても、被告人が右の様に本件自動車を使用したのは、其の使用状況、使用時間等からして一般公衆の用に供されて居る汽車や乗合自動車等を利用した場合又は駅から演説会場迄行く為、ハイヤーを使用する場合の様に一般の利用方法によつて臨時的に使用した場合等とは異り、本件選挙運動を為す目的にのみ使用したものと認めるのが相当で原判決が被告人の本件所為を前記法条に所謂主として選挙運動の為に使用した場合に該当するものと認定したのは真に正当で何等所論の様に事実を誤認したり法律の解釈を誤つた違法は存しない。

論所は独自の見解に基くものであつて論旨は理由がない。

論旨第三点について。

凡そ犯意の成立には特別の規定がない限り違法の認識を必要とするものではないからたとい被告人が主観的に公職選挙法に違反しない行為であると思つて居たとしても本件自動車の使用に付選挙管理委員会の発行する証明書を携帯せず、且同委員会の定める表示をして居ないことの認識があつた以上被告人の犯意を阻却するものではない。論旨は理由がない。

併し職権を以て調査するに原判決は原判示事実に対し其の適条に於て刑法第四五条、第四八条第二項を適用して居るが、被告人が原判示の様に所定の証明書を携帯せず且所定の表示をしなかつた行為は包括的に一個の公職選挙法第一四一条第三項違反の罪が成立するものであり、又午前九時頃から午後九時頃迄引続き本件自動車を使用したことは現実に選挙違動をした場所が数ケ所であつたとしても之を包括的に一個の選挙運動の為の自動車の使用と見るべきであるから原判決が原判示事実に対し刑法併合罪の規定を適用し併合罪の加重をした罰金額の範囲内で被告人を処断したのは法令の適用を誤つた違法があり其の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかで此の点に於て原判決は破棄を免れない。

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